2022年2月26日
5年の間バーチャルYoutuberの先頭を担ってきた親分ことキズナアイが事前の予告通り無期限のスリープに入りました。
最後を飾ったライブ、Kizuna AI The Last Live “hello, world 2022”はクラウドファンディングを実施していましたがその達成率は実に1700%を超え、集まった資金は5,100万円、2,800人のファウンダーによるバックアップで大成功のうちに終了したと言えるのではないでしょうか。
一つの時代を牽引したアイコンの無期限の活動休止は内外に様々な波紋を呼ぶ事に間違いありませんが、「成長のための前向きな休止」の言葉の通り後に続く者のために光を灯してくれたのではないでしょうか?
ライブの中で発表され(正確には前日に告知がありましたが)、キズナアイ本人とのデュエットで大きなインパクトを与えた“CeVIO AI キズナ”の発表もそんな道しるべの一つではないでしょうか。
CeVIO AIとは?
多くの人が”Vocaloid”と呼ぶものの一つがCeVIOシリーズです。
Vocaloidと類される所謂「人工音声合成」の分野には多様なソフトが存在しています。
YAMAHAが開発したVocaloid
Vocaloidから産まれ独自のエンジンに進化を遂げた初音ミクNTを擁するPiapro Studio
よりリアルな歌唱を目指し大学との産学連携によって開発されたCeVIOとその後継であるCeVIO AIとCeVIO Pro
高性能な発声エンジンの他LuaやJavaScriptでエディタ機能の強化を行えるユニークなSynthesizer V
無料で利用可能な高性能なエンジンであるNEUTRINO
イメージとしてはバーチャルYoutuberといえばキズナアイというアイコンとして意識されるように、初音ミクのインパクトによって多くの人が人工音声合成とはVocaloidであるというブランドイメージが確立されて以来ジャンルとしてVocaloidという単語が定着したままの状態であると言えます。
なので“CeVIO AI キズナ”に興味を持った人に最初に気を付けて頂きたい事は「焦ってVocaloid 5を購入しても動きませんよ。」ということです。
CeVIOには会話などトークデータを作成するトークエディタと歌を作成するためのソングエディタという2種類のエディタが存在します。
それぞれにトーク用のライブラリとソング用のライブラリとして異なる製品がラインナップされています。
ライブで披露された“CeVIO AI キズナ”はソングライブラリですので、リリースされる製品も“CeVIO AI キズナ”ソングになると思われます。
CeVIO AIは株式会社テクノスピーチの製品であり、YAMAHAのVocaloidではないのでご注意ください。
CeVIO AIの歌唱力は?
CeVIO AIにも初音ミクや鏡音リン・レンのように様々なライブラリが提供されています。
CeVIO初代からの公式キャラクターであるさとうささら。
Vocaloid時代から性能の高さに定評のあったIA、その妹分に当たるONE。
バーチャルアーティストとして活動し、若い才能として注目された花譜の歌声をライブラリ化した可不。
クラウドファンディングによりライブラリ化された東北ずん子と東北イタコ。
それぞれが個性的なボイスライブラリとして販売されています。
CeVIO AIはAIと銘打つだけあり、CeVIOの頃から比較しても高い歌唱性能があります。
1月に作成した曲もCeVIO AI さとうささらを使用しています。
ほぼベタの入力で誰でも簡単に歌を入力できてしまうという点では非常に扱いやすい製品だと思います。
DTMに馴染みのない方も多いと思いますので少しだけ説明すると、CeVIO AIはスタンドアロン(独立型)エディタのソフトウェアです。
簡単に言うと歌声を作るだけならCeVIO AIといずれかのソングライブラリだけあればできます。
内部に簡単なミキシング機能もあるので、カラオケ音源をトラックに追加すればCeVIO AIだけで歌音源を作る事も出来ます。
つまり情熱さえあれば“CeVIO AI キズナ”に様々な歌を歌ってもらう事ができるということです。
ライブで披露されたキズナアイと“CeVIO AI キズナ”のデュエットですがまだ開発途中のものと考えられます。
今後製品版に向けて調整を行ってからの発売となると思われますので正式リリースまではあと少し待つ必要があるのではないかと考えています。
また、ライブ中トークが少しだけ入ったのですがこちらはキズナアイのトークデータではなかったので開発の予定があるのかはまだわかりません。
AIによる会話発声の作成とキズナアイの個性であるイントネーションの事を考えると未知数ではありますが、いろいろな事を考慮するとトークデータは発売はされないかな?という気がしています。
お披露目だけでまだ詳しい情報も出そろっていませんので、興味のある方はぜひCeVIOプロジェクトの公式アカウントをフォローして続報をチェックしてみましょう。
人はVirtual Beingに夢を見るか?
人工音声合成の歴史は古く、YAMAHAはMIDI音源全盛の時代から合成音声の歌唱を実現する拡張機能を発売していました。
当時の性能では仮歌用にちょっと使うにしても苦笑いしてしまうようなものだったかも知れませんが、Vocaloid MEIKOの発売でその注目度は飛躍的に上昇します。
ボコーダーボイスのようにあえて加工したボイスを使用するジャンルがあるように、バーチャルシンガーは21世紀より以前から今日まで成長を続けてきました。
機械による合成音声、人に至るにはまだ遠かったそれはメタバースの時代を目前に人間に近いところまで進化してきたと言えます。
研究はされていてもそれを実現するだけの環境を個人が持てなかった時代に生まれ、ユーザーと共に育ってきた人工音声合成は初音ミクというアイコンが牽引し一つのジャンルとして確立されるに至りました。
様々な制約を超えた新たな表現に向け、未知のチャレンジの中で生まれ多くの人に愛され注目されるに至ったキズナアイと多くのバーチャルYoutuber。
仮想シンガー、仮想空間、人は常に新しいフィールドを求め続けてきました。
それらは異なる場所で生まれ、異なる道を歩んできたジャンルですが、クロスオーバーして生まれた新たな”キズナ”はさらなる進化をもたらしてくれるのではないでしょうか?
それこそが親分、キズナアイが灯した希望と可能性の一つでもあるんじゃないかな。・・・などと考えてみたりするのです。
そう思うと「夢の続きは自ら描くものだよ。」と、そんな言葉が聞こえてくるような気がしませんか?
願わくばそこに新たな才能と素晴らしい作品が生まれることに期待を込めて、キズナアイが多くのバーチャルYoutuberとリスナーに預けていったバトンの行く先をこれからも見守っていきたいと思います。
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