音楽教室と学校は異なる。文部科学省もJASRACに理解を示す。

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文部科学大臣会見(平成29年8月4日):文部科学省

JASRACと音楽教育を守る会、ファンキー末吉氏と新しい話題に欠かないJASRAC。
今回は珍しくJASRACに対してアドバンテージのある発言が飛び出してきましたね。

 

「音楽教室は営利目的が一般的で、小中学校で音楽を習うのとは性格が異なる。一定の線引きが必要」――8月3日の内閣改造で入閣した林芳正 新文部科学大臣が、音楽教室からの著作権料徴収に対する考えを示した。

林文部科学大臣から「音楽教室と小中学校での音楽教育は性質が異なる」という発言がありました。

発言を引用します。

音楽教室というのは、まあ所謂営利を目的とするですね、会社形態でやっているという事が一般的であると思いますけれども。
まあそういう場合はあの、我々が小学校中学校で音楽を習うという事とは少し性格を異とするのかなあという風にも思っておりますので、そこをきちっと着目しながらですね、しっかりと一定の線引きというものをやって行く必要がある、そういう風に思っております。

–  林文部科学大臣会見(平成29年8月4日):文部科学省

これは先の記事で取り上げた著作権法三十五条に合致する発言であり、やはり原則的には法に基づいて判断されるべきという見解であると考えられます。

弁理士の見解とほぼ一致

これに先立って法的な観点からの見解として動向について記事を作成していた栗原先生も音楽教育を守る会の主張は厳しいのではないかという見解を出しています。

音楽教室での演奏に対する著作権使用料でJASRACとヤマハ音楽振興会をはじめとする音楽教室側が争っていた件、ついに音楽教室側が提訴するようです。

大臣の発言もありこれに対して反論も噴出しているようですが、相変わらず感情先行であり法的な問題としての提起は見られないようです。

JASRACに一定の理解「音楽学校と小中学校は違う」 林文科相、著作料徴収巡り

以前も書きましたが日本は法治国家ですので原則的には法律に則った判断がなされます。
みんなが言ってるから悪なのだ!!と単純に思い込んでしまうのは非常に危険ですし、批判をするのならちゃんと法律は読んでからにした方が良いと思います。

会見の動画は文科省公式から見られます

取り上げられている発言は5:42からの質問に対して回答されたものです。

JASRACという言葉に過敏に反応する人が非常に多いので見落とされていますが、どちらかと言えばその前の発言の方が重要だと考えています。

音楽についてはですね、自分も愛好家の一人として限られた知見を活かせればと思っておりますし、その以外の文化全体についてもですね、文化GDPという言葉が出てきておりますように今後日本の社会を考えていく上でやはりこの、物質的な豊かさというものがここまで既にきておりますので、心と言いますか精神的な豊かさと言ったことを考える上で文化というのは最も大事な位置を占めている、そういう風に思っております。

まさに伝統的な文化を守りながらですね、新しい文化をどう創造、これはCreateという意味の創造ですが、していくかという事が大変大事な課題だと思っておりますので文化庁長官を先頭にですね、しっかりと政策をやって参りたいと思います。

また著作権昨日簡単に触れましたがこの文化を促進していく上でもですね、この著作権というのは一つの大きな枠組みでございますので、これの見直しをしていこうということで党でも検討を重ねてまいりましたので、これをしっかりとですね形にしていくということも、議員立法という事も選択肢にあろうかと思いますけれども、政府としてもですねしっかりと審議会の答申を受けてこれを閣法としてやって行くという作業をですね、しっかり進めていければという風に思っております。

林文部科学大臣会見(平成29年8月4日):文部科学省

非常に明確な発言ですね。

これは世界的に推進されている知的財産保護の厳格化、政府の進める知財保護の厳格化を視野に入れた発言であると考えられます。
法整備を意識した発言でありこの内容は非常に重いものです。

今後は知財の活用・創造を推進するために知財に関する教育が推進される方針です。
JASRACばっかり見ていると時代に置いて行かれちゃうかもしれませんね。

私学も対象になるという誤解

私立学校法において私立学校であっても「学校」であるという点は明記されており、認可を受けて設置された私立学校は公的な性質を持つものとして認定されています。

(定義)
第二条  この法律において「学校」とは、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律 (平成十八年法律第七十七号)第二条第七項 に規定する幼保連携型認定こども園(以下「幼保連携型認定こども園」という。)をいう。
2  この法律において、「専修学校」とは学校教育法第百二十四条 に規定する専修学校をいい、「各種学校」とは同法第百三十四条第一項 に規定する各種学校をいう。
3  この法律において「私立学校」とは、学校法人の設置する学校をいう。

第三条  この法律において「学校法人」とは、私立学校の設置を目的として、この法律の定めるところにより設立される法人をいう。

私立学校法

つまり学校での使用という規定に該当するので徴収の対象とはなり得ないでしょう。
そして音楽教室は認可された学校ではないという明確な線引きはここで判断できるものと考えられます。

私学だけでなく公立においても休み時間などに放送される音楽については規定範囲内なのかには疑問も残りますが、少なくとも「学校」という認可を受けた場所での制限内での使用に問題が起きる事はないと考えられます。

可視化は進んでいく

管理厳格化に伴い、JASRAC等の著作権管理団体の在り方や活動もより明確なものになっていくと考えられます。

現在でもJASRACから信託者への利用実績の報告はリストとして提示されるようになっていて実体の把握と利用料の透明化が推進されている事が分かります。

放送各社などの報告も厳密になったことによってより正確な分配がなされるようになっています。
これは放送だけでなくほかの分野でも推進されるものと考えられますので、厳格な徴収と分配は今後も進むと考えています。
分配の透明性を訴える声の通り推進されているのでもう少し評価されてもいいと思うのですが、不思議ですね。

文化庁から音楽教室を守る会への回答も出ています

文化庁に音楽教室を守る会が提出した質問書に対する回答も公開されました。

JASRACの音楽教室からの演奏著作権料徴収の動きに対抗し、音楽教育の現場や音楽文化を守るために活動している、音楽教育事業を営む企業・団体による組織です。個人事業者も今後影響を受ける場合があるため、その代表として指導者の協会も参加しています。

文化庁としては著作権管理事業法に則った方針であれば手続きを進める、但し届け出は双方合意であることが望ましいのでちゃんと協議をするべきと回答しています。

これは長年に渡って協議に対して一貫して反対してきた教室側に対して料率で相談しましょうというJASRACの提案を拒否し続けた部分に対しての指摘でもあるので、暗に「話し合って出直せ」という事でもあります。

回答の3にあるように協議を求める事は可能でありつつも譲歩の余地がないのは守る会側なので、このまま硬直していると状況は悪化するのではないかなあと考えています。

冷静に考えれば当然という内容ばかりですので今更どうこうという事もないと思いますが、法廷での対決を望む守る会の主張に対して監督省庁からも異論が出ていることを強行することが教育の振興であるのか甚だ疑問ではあります。

相変わらず誤解ばかりが目に付くこの問題が軟着陸するポイントはあるのでしょうか?
今後も注目していきたいと思います。

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ウィンドシンセを片手に曲を作っています、演奏するのも聴くのも好き。 ゲームとITと変な情報を拾ってくるのが得意。 色々とやっているらしいけど詳細はヒミツ。 オリジナル曲を公開しています。 http://www.nicovideo.jp/mylist/31704203 作曲風景の生放送もしています。 http://rainbowsound.cafe/rainbow-sound-cafe-live/ 音楽やDTMに纏わる話題を色々と書きます。

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