ヤマハ・カワイなど音楽教室が結成した「音楽教育を守る会」と聖域なき徴収へ向け駒を進めるJASRACの対決はいよいよセカンドステージに突入です。
ヤマハの法務部門が黙って首を垂れる訳がないと前回も書きましたが、JASRACが退くわけもなく両者の対決は法廷へ舞台を移すことになりそうです。
音楽教室の運営を行うヤマハ音楽振興会は7月にも東京地裁に教室での演奏が著作権料の支払い対象ではないと確認を求める訴訟を起こす方針だそうです。
文化か商業か
音楽教育を守る会からの主張としては音楽教室での演奏は“音楽理解力や演奏技術向上を目的としており、「聞かせることを目的」とした演奏ではない”とされています。
対してJASRACからは事業者に対し”使用料規程「音楽教室における演奏等」の制定と、楽器教室における演奏等の使用料徴収の開始について”という文書で教室での演奏利用からの使用料徴収に対する規定の新設を提案する案内が提示されています。
この判断は司法が行う事ですが、それぞれの思惑と今後の行方について少しだけ考えてみましょう。
ヤマハの沿革から
ヤマハ音楽教室を運営しているのはヤマハ振興会であり振興目的であると主張される方もいらっしゃるようですが、音楽教室事業がヤマハ音楽振興会傘下に運営移譲したのはごく最近の事です。
ヤマハの沿革を見ると、事業の興りは1954年のオルガン教室開講まで遡ります。
この時点ではヤマハ音楽振興会は存在していません。
また過去の決算短信では次のように述べられています。
9 少子化の影響
当社グループの基幹事業である楽器事業では、子供を中心とする音楽教室や英語教室を展開しているほか、学校を通じた販売も重要な販売経路となっております。
今後、特に日本における少子化の進行により、売上高の減少を招く可能性があります。
音楽教室としての存在価値は疑いようのない物ですが音楽教室事業は基幹事業である楽器事業の販売促進を兼ねるものであることもまた事実であり、これを営利目的ではないと主張するのはやや苦しいのではないかと考えます。
音楽教育を守る会とJASRACの攻防
音楽教育を守る会の発足からJASRACとの攻防はすでに始まっています。
先の文書による案内と同時に、意見があれば提示してくださいという形でJASRAC側から音楽教室を守る会に対してヒアリングを行っています。
それに対しての経緯が音楽教室を守る会に公開されいます。
回答に対してJASRAC側が完全に無視をしていると話題になった内容ですね。
しかし回答の文書を見るとこれはこれで酷い内容でもあります。
(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
文書では第二十二条には該当しない、と回答されていますが問題は「なぜ該当しないのか」という根拠が示されていない事です。
ちゃんと書いてあればさすがのJASRACも「見解だけだよねこれ?」という回答にはならないと思うのですが・・・
守る会は守る会であって、ヤマハの法務部門はノータッチでこの文書を返してしまったのかなあ・・・
著作権の制限ではどうか?
著作権法 第三節第五款には著作権の制限という私的な使用についての規定や例外的に著作物を使用できる規定についての記述があります。
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
既にこういった問題に対して対応する条項がしっかりと策定されているのでした。
ここに照らすのであれば”音楽教室は営利目的で設置されたものではない”と主張しなければならない事になるので非常に苦しいのではないかと考えられます。
追記
弁理士である栗原 潔先生の見解も「厳しいのではないか」との事です。
争点的にも想定される範囲の内容であり、守る会側からの先手は勇み足だったのではないでしょうか。
2017.05.20 – 追記
民進党の宮崎岳志議員が閣議で質問をしてしまったようです。
こんなことを閣議で質問すれば法的な一般論で答弁されることは当たり前だと思うのですが、結果として政府の見解としては音楽教室だからと言って許諾が不要だということはないという明確な記録を引き出してしまった以上、守る会の主張の根幹を揺るがされる事態となってしまいました。
なんでこんな質問したんでしょうねえ?人気取りのつもりかしら;
関係団体の動向に注目したい
メインプレイヤーがヤマハとJASRACだけのように描かれている状況ですが、実際はそんなに簡単な問題ではありません。
音楽を巡る収益は様々なルートを経ています。
その大半を受領している音楽出版社の団体、日本音楽出版社協会(MPA)は今の所ノーコメントです。
メインプレイヤーであるヤマハもまたこの協会の会員です。
何故ならヤマハ自体もヤマハ音楽出版として楽曲・楽譜の販売を行う事業者でもあるからです。
他事業者としては徴収される使用料が増え、分配により増益が見込めるのであれば当然喜ばしい事でしょう。
この状況に対して理解を求める事ができるのか、業界団体の動向もしっかり注視しておきたいと思います。
いかがでしょう。
みなさんはどのように考えられますか?
最初の主張を振り返ってみると、「聞かせる事を目的としていない」とあり「営利目的ではない」という表現を使用していない点からもやや苦しい主張である事は否めないのではないかと考えます。
しかし今後の交渉次第で状況はまだ変化する段階です。
音楽教育を守る会では文化庁にJASRACの使用料規定案を取り下げるように指導を請願する署名活動を行っています。
音楽教育を守る会の理念に賛同できる方は署名に参加しておくべきです。
結果が出てからでは遅いのですから、主張があるなら参加しましょう。
前回もアンケートはタイミングが悪くレスポンスが有効なほどありませんでしたので再度音楽教室に関わる方向けのアンケートを設置してみます。
是非皆様からのご意見をお聞かせいただければ幸いです。






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