JASRACと1,100億円の行方

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Photo by Devanath from pixabay

平沢進さんのインタビューの件で気になった事があったので少し調べてみました。

 

あらかじめ申し上げておきます。

このまとめは個人的に調べたことを理解するために纏めている物であって、誰かを攻撃したり非難する意思はありません。
一つだけ欲を言えば、作家の立場や権利が守られる環境に改革される事が希望です。

実態について確認する方法がない事項が多分に存在していますので事実を保証できませんし、誤りを含む可能性があります。
事業に対して理解の深い方、実態を調査できる方がおりましたら誤りの訂正も含め、より適切な場所で情報提供をお願いいたします。

数は力

一般的に団体や集合には力が存在します。

民主主義において「数」は力ですからね。

JASRACは約300万件という圧倒的な音楽著作権データを管理しているといいます。

それだけのデータを営業利益のn%の支払いで利用可能であるというのなら、大型の事業者であれば管理コスト面から考えてもメリットは非常に大きいのではないかと考えられます。

徴収側のJASRACにとってもそれは非常に有益な事でしょうしコストダウンと利用促進による徴収増が期待でき、利用者側もコンテンツの価値の向上で売り上げ増が見込めるのであればそれは理想的な形かもしれません。

JASRACにより一年間に徴収される著作権料は実に1,100億円に達しています。

それほどの徴収額がありながら、製作者(個人あるいはバンド等、以下製作者で統一します)への還元が少ない、不透明であるとされる理由はどこにあるのでしょうか?

音楽は出版社から販売されている

平沢進さんのインタビューでもありましたが、音楽は出版社から販売されています。

流通への配分やCDプレス、各所へのプロモーションなど、製作者だけではこなせないほど大量の手続きを経て市場へ出ることになります。

音楽出版社は製作者と契約を結びこういった手続きを代行しているわけです。

当然音楽出版は慈善事業ではありませんので製作者の成果物に対して何らかの契約を結び、それらから発生する利益を得ることで事業として成立しています。

ここでもう一度平沢進さんのインタビューを振り返ってみます。

平沢氏: 例えばメジャーなレコード会社で活動してたとしますよね。レコーディングが終わるとある日突然、出版会社から契約書が届くんですよ。で、契約してくれと。契約条項にいろいろ書いてあるんですけど、契約書が送られて来た時点で、JASRACにもう勝手に登録されているんです。残念ながらアーティストは、著作権に関してまったく疎い。同時に私自身も疎かったがために、そういうものだと思いこんでいたわけですね。それによって、出版会社に権利が永久譲渡されている曲というのがあったりするんですよ。で、JASRACで集金されたお金は、この出版会社を通るだけで50%引かれて、アーティストへ戻るという構造があるんですね。出版会社は“プロモーションに努める”と言いますが、成果は保障せず、どんなプロモーションをするのか何度説明を求めても、回答しないことがほとんどです。大きなセールスが期待できるアーティストについては積極的に動きますが。

「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言

もう一つ参考になりそうな情報がありました。

卸売りのシステムを考えれば流通マージンは当然として、1枚のCDの中にこれだけの費用が込められています。

2017.02.12 – 訂正

yam@oさんよりCDの印税について正しい情報をお教えいただきました。

上記のCDの利益分配について製作者の分配はCDの利益から著作権料6%がJASRACに徴収され、JASRACの管理手数料と出版社の按分を経て残った分となります。(都合1~2%となります)
また誤解をしないでいただきたい点は、CDでの印税についてがこの考え方であり後述する放送での利用などから発生した著作権料は別に分配されます。

誤りを訂正するとともに正しい情報を提供していただきましたyam@oさんに御礼申し上げます。
ありがとうございました。

JASRACと音楽出版社の関係

JASRACは市場に流通する音楽、放送・映画・カラオケ・ライブ演奏・CDなどにに含まれる団体管理下の著作物に対して使用料を請求し、それを製作者へ還元する団体であるとされています。

実際1,100億もの徴収額がある訳ですから、徴収に対する機能については疑いようがありません。

還元についてはどうかというと、JASRACのページに分配についての解説がありました。

なるほど、音楽出版社が最も多く分配を受けられる訳ですね。
(注記:権利者の数によって分配の比率は変動します。)

先の情報と合わせるとCDの場合は音楽出版社から製作者へ印税が渡るシステムな訳ですが、その料率は約1~2%
(著作権料で6%とありますが、これは合算で入るのでしょうか?)

だとすれば1,000円のCD販売利益が発生した場合、製作者の元には10~20円が印税として入ってくるということになりますね。

製作者への還元が難しいことの様に思えてきました。

音楽出版社との契約とは?

平沢進さんのインタビューでもあったように、出版社との契約は非常にアンバランスなものなようです。

これについては実際の契約書を見て回ることが不可能なため憶測の域を出ない(証言があってもその正確性を担保してくれる人が存在しない)ので断言することは出来ませんが、製作者に対して不利な条項の含まれた契約も存在している可能性があります。

契約書を取り扱った事がある人なら分かると思いますが、条項の多い契約書を読み解くのは一苦労です。

個々で見れば零細事業者ともいえる製作者にしてみれば流通・プロモーションにまで強いパイプのある音楽出版社に所属するメリットは非常に大きいものだと思いますが、それだけに強力な主従関係を発生させてしまう契約を結んでしまった場合どうなるのかは想像に難くありません。

2017.07.07 – 追記

公正取引委員会が不公正な契約について調査を開始したようです。
作家・実演家への分配が不均衡とされる原因が明らかになるかもしれませんね?

どなたとは申し上げませんが、調べられると困るお話もあるんじゃないですか?

2017.11.15 – 追記

注視してる所とは違う所から声が上がってきました。
フロント側だけの問題ではないですよね。

これからも引き続き注目していきたいと思います。

包括のシステムは放送と相性がいい

徴収のシステムについてもちょっと触れてみたいと思います。

JASRACの徴収額の項目に「放送等使用料」があります。

テレビなど放送局がBGMとして使用したり、音楽番組での上映などに使用した場合に支払うべき使用料です。

JASRACではこの使用料を1曲(5分につき) 64,000円と利用料を定めています。
e-Licenseでは60,000円でした。

当然利用料については他者の制作物でありJASRACが勝手にディスカウントする訳にはいきませんのでこれは動かないのだと思いますが、実際には包括契約で利益の中から1.5%(2013年の情報)をJASRACに支払う事でJASRAC管理楽曲を自由に使うことが可能になっています。

この契約が新規参入を妨げるとして独占禁止法違反の判定を受け、排除命令がJASRACに下る事になりました。

この点について少し勉強をしてみたのですが、現在も包括契約としての枠組みは残っていて放送各社からの使用実績報告に基づき料率を計算する(全使用実績中のJASRAC管理楽曲の割合を掛け合わせている?)という今までよりさらに分かり難い状態にあるようです。

ゆくゆくは全数報告を目指すという方針が掲げられていますが、全数報告であれば包括契約は不要になる可能性もありまだ先行きについては分かりません。

しかし、ここまでの状況を考えるとJASRACはそれなりに使用実績の実態を把握できているのではないでしょうか?

それなのになぜ製作者への還元がなされていないのでしょうか?

放送での使用は”演奏”ではない

JASRACによれば演奏された実績(報告がなされた場合)については製作者へ直接還元があるという記述があります。

これは日本音楽出版社協会の解説でも同様の記述があるためライブなどの演奏があればその分は製作者へ還元されるという仕組みで間違いないようです。

これをそのままの意味で捉えればライブハウスなどでの適正な使用報告については確実に製作者への還元となるんですね。
(注記:100%と表記していましたが、誤解を招くため訂正しました。JASRACから直接入金になりますが、他権利者との按分は存在しています。)

よしみんな、ライブハウスへ行け!!(マジで)

ライブハウスでは真面目に契約を履行して様々な業務とともに適正な運用の努力をされているので本当に利用してください、お願いします。

脱線はさておき。

利用者が見聞きするなかで最も影響力があり利用回数が多いのはやはり放送だと思いますが、J-WIDによると放送と演奏は別カテゴリで表記されています。

つまり、包括契約であっても全数報告であっても徴収された利用料のほとんどは音楽出版社との按分になって製作者に効率よく届く訳ではないんですね。

平沢さんのインタビューの本質がだんだんと理解できてきました。

音楽出版社とは何者なのか?

こうなってくると音楽出版社とは何なのかが気になります。

JASRACと信託契約を結ぶための要件について、公式サイトに説明があります。

過去一年以内に第三者による利用実績があったことや、近い将来に利用されることが確定している場合において信託契約を結ぶことができるようです。

利用の実績についても条件があり、自主製作盤のCDや有線放送、ミニFMなどでの利用はNGなどの条件をクリアして初めてJASRACに信託が可能になります。

これらを鑑みると製作者個人(ないしグループ)で直接の信託は困難であり、多くの場合音楽出版社を経由した信託を必要とするようです。

要するにJASRACの主要なお客様は製作者ではなく音楽出版社な訳ですね。

J-WIDでは音楽出版社名での検索が可能ですので出版社別にアタリを付けて引っ張ってみました。
実数のあとの%はJASRAC信託曲が300万曲と仮定した場合の比率を表しています。

数字の大きい所からどうぞ。


フジパシフィックミュージック 376,105
シンコーミュージック・パブリッシャーズ 224,893
ポニーキャニオン 16,353
EXIT TUNES 2,220

フジ・メディアホールディングス系 約 23%


ソニーミュージック(系列計) 355,697

ソニーミュージック系 約12%


ユニバーサルミュージック 297,065

ユニバーサルミュージック系 約10%


ヤマハミュージック 196,745
ヤマハ音楽振興会 15,600

ヤマハ系 約7%


VICTOR 79,372

AVEX 49,759

NHK  42,609

vap 2639
東京サウンド・P 273
日本テレビ音楽 35,909

テレビ朝日 30,789


2017年 2月調べ

J-WIDでは信託状況が「無信託」(JASRAC管理下でない楽曲)の情報も含まれているためこの数字全てが信託中であるとは限りません。(信託情報で検索する方法は提供されていません。)
また系列内で重複が含まれる可能性もあります。

分かる範囲で系列を集計してありますが、中小の出版社が業務提携や大手への営業などをかけている場合この数字に増減があるかもしれません。

でも登録数の偏重を考えると序列が逆転するほどの差は恐らくないんじゃないかな?

できれば正確な数字を把握したいのですが100万件以上のデータを手集計は困難ですし、集計プログラムで自動的に収集するような操作は負荷をかけすぎて怒られそうですし、誰かの補足に期待をしたいと思います。

再度考える、包括契約と放送はなぜ相性がいい?

あくまでも独り言、ただの妄想です。
そう、これは個人の書くつまらないブログですよ。

これをソースにしないこと、いいですね?

JASRACの言うサンプリング調査に対して、放送事業・配信事業等々を運営している事業者って影響力を行使できるんじゃないかな?

純粋にサンプリング調査の結果に基づいて分配を決定しているのだとしたらその分配比率にも何らかの”歪み”を生じさせることができてしまうのかも?

そういえば事業収入から使用料も払ってるんだっけ、あいつらは払ってないっていう睨みも効いたりするのかな?

そういえばMIDI狩りも配信業者が怒った所からだったっけ。

権利を引き上げて別の団体に移すって言うとやっぱり困るのかな?

音楽出版社に対して分配される使用料については音楽出版社から制作者への再分配が行われるという事のようですがこの部分に関する情報は手の届く範囲からは取得できませんでした。

うーん、中々一筋縄にはいかないものですね。

とにかくJASRACによるサンプリング調査から算出された利用料の分配は各音楽出版社に渡って、そこから諸々差し引いて製作者へ渡る訳ですね。

放送事業者が昔から音楽出版事業も手掛けているケースが多い理由というのもなんとなく理解ができました。

グループ企業の楽曲をガンガン使えば分配が入ってさらにソフトの売り上げも伸びる錬金術なんですね。

なお放送局が音楽出版社を持つのは日本独自の形態である。レコード会社が放送局から番組タイアップを獲得するのと引き換えに、放送局は主題歌にした音楽の著作権を著作者から放送局子会社の音楽出版社に譲渡させ、自社の各番組で大量に放送するという慣行が1990年代以降続いている[4]。これにより、放送で流される曲の多くが子会社が権利を持つ曲となり、著作権使用料などの利益がグループ内で還流する一方で、放送される曲に偏りが生じたり、著作者は音楽を流してもらうために放送局に著作権を譲渡しなければならないという悪しき商慣行が生まれたりするなど、公平性を損なう恐れがある[4]。アメリカなどでは放送局が音楽出版に投資することは禁じられている[5]

Wikipedia – 音楽出版

IR情報なんかと合わせてみると何か見えたり見えなかったり。

憶測ではない、実態を知る術が欲しいですね。

まとめ

音楽産業にはレイヤーがあり、著作権使用料の収入の流れは必ずしも製作者へ直通する訳ではないという事が分かりました。

日本の音楽産業の市場規模は約3,000億(2015年)と言われますが、これは流通及び出版により得られる利益であり大半は出版社のものです。

ここから徴収された著作権料はまた出版社に戻り、そこから製作者への分配となっています。
(この部分は各社の契約次第ですが詳細が不明です。)

演奏分は直接還元であると聞くと手厚く感じますが、ライブハウスなどの演奏からの徴収は全体から見ればごくわずかです。

2000年以降の音楽配信サービスの拡大や様々な形態のデジタルデータ配信・メディアミックス展開などで音楽の利用シーンは拡大していますが、総じて権利を多く持つ場所が有利になる数の力が強く作用して音楽をめぐる収益は回収されています。

製作者にとって望ましい形態とは何なのか、今一度考えて見なければいけないのかもしれません。

今必要なことは

著作権法は本来製作者の権利であり、その財産たる著作物を保護するための法律であるはず。

もちろん適正な管理が行われ、適正な配分が行われているケースもたくさんあるのでしょうし実際に裁判などで適正な使用料が請求された判例も多々あります。

それでも製作者への還元が適正でないケースの噂が後を絶たないのはやはり構造的に”何か”がおかしいのでしょう。

平沢進さんが自ら音楽出版社を立ち上げ方法を示したのは素晴らしいことです。
まさに先駆者であり大きな問題提起なのかもしれません。

しかしだれもが同じように出版社を立ち上げて自らの手で道を切り開く事が可能な訳でもありません。
特に名前が売れていない若手アーティストには土台無理な話になってしまいます。

連綿と続く構造には長く培われてきた慣習もあるでしょうし、若手を育てる土壌を作ってきた面もあるでしょう。
既存の構造に対して疑問を持つことはできても、壊してしまえと安易に言うことはできません。

JASRACは善か悪か?のような二元論で語ること自体間違いなのかもしれません。

この状況を改善させるのは徴収の方法ではなく下請法なのかもしれないなあ、なんてね。

2017.02.11 – 修正

演奏権の分配について100%と書いておりましたが、JASRACから直接入金があるが他権利者との按分も存在するため表記を訂正しました。

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みるくここあ
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ウィンドシンセを片手に曲を作っています、演奏するのも聴くのも好き。 ゲームとITと変な情報を拾ってくるのが得意。 色々とやっているらしいけど詳細はヒミツ。 オリジナル曲を公開しています。 http://www.nicovideo.jp/mylist/31704203 作曲風景の生放送もしています。 https://rainbowsound.cafe/rainbow-sound-cafe-live/ 音楽やDTMに纏わる話題を色々と書きます。

2件のコメントがあります

    • ライブハウスの使用料については参考として頂いたURLのようにライブハウスのサンプリング調査によって分配が行われています。
      またこの話には続きがあり、しほりさんご自身もJASRACに確認を取り問題について納得されて終了しています。
      ライブハウスのサンプリング調査については調査対象が非公開であるため(公開すると対象店舗が集中的に使用される不平等を招く可能性があるため)ご指摘の通りサンプルから漏れる可能性は存在しますが信託している方は「納得の上信託している」そうです。

      参考URLにもあるように、自身が全国を回って使用実績を調べるなんて現実的ではなく、かけるコストと労力を新たな作品に向けた方が後の為に良いからです。
      これはJASRACにしても同様で、作家への支払いを最大化するために過剰に調査コストを掛けない為にも統計的に必要十分な範囲を調査対象として使用しているのだと思われます。

      全数報告と全数確認は範囲を拡大しているので、ライブハウスでの使用実績が100%報告されるようになればより精度は高くなるものと考えています。

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