JASRACは音楽を殺すのか?舞台は本当に法廷へ

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Photo by succo from pixabay

音楽教育を守る会の勝ち目は薄いと思います。
(個人の感想です。)

 

音楽教育を守る会が7月にも東京地裁にJASRACに対して使用料を支払う必要がない事の確認を求める集団提訴を行うことを決定したようです。
(前回は方針だけだったのかな?)

個人の感想としては先に書いたように音楽教育を守る会側の主張が認められる可能性は低いのではないかと考えています。

少し前に取っていたアンケートの結果なども合わせて問題について少し考えてみたいと思います。

JASRACは訴えられているから「悪」なのか?

提訴されているので名目上被告であることは間違いないのですが、イメージと内容は大分異なると思います。

教室を運営する約350の会社・団体でつくる「音楽教育を守る会」が30日、東京都内で総会を開き、JASRACに対し、使用料を支払う義務がないことの確認を求め、東京地裁に集団提訴することを決めた。

これは“確認訴訟”であり、一般にイメージされる損害賠償であるとか刑事訴訟のような内容ではありません。

そもそも権利の主張について善も悪もなく、それが法的に適正かどうかしかありません。

JASRACは著作権法にに照らし音楽教室での著作物の使用について請求を行いますという主張し、音楽教育を守る会は著作権法二十二条の「公への演奏」に該当しないから支払い義務はないという主張している。

双方の主張を確認する裁判であり事の良し悪しを決める裁判ではありません。

前提から勘違いしていると話が見えなくなりますのでよく読んで冷静に判断したい所です。

守る会側の主張の根拠とは

音楽教室では楽譜や教材を購入して運営しているのに横暴だ、という論をちらほらと見かけますがこれは当然です。

楽譜や教材の発行には”出版の権利”許諾が必要であり、出版にあたり使用料を支払っています。
これを購入したから好きに演奏してよいか?と言われればそれは“No”で、“演奏の権利”は別に設定されています。

実際楽譜を購入して使用する楽団やバンドがコンサートやライブを開催すれば”演奏の権利”分の使用料を支払うルールになっています。
これらのルールが徹底されていなかった時代は購入したCDを使用してカルチャースクールのレッスンを行うなどの”脱法”が横行していました。

今になってなぜ?という意見も多いですが、逆に追跡したり実態調査の精度を上げる事が出来るようになってきたことで見逃されてきた領域まで徴収できるようになってきているという事です。

カルチャースクールなどでの楽曲使用などが徴収対象となる判例が存在し、実際徴収されている現況においては同じ様にレッスンで楽曲を使用することがある音楽教室が徴収対象外となるのは公平ではなくなってしまいます。

前回も少し触れましたが、音楽教育を守る会がJASRACからの通達に対して返した返信は「著作権法二十二条には該当しません。」としか書かれていませんでした。

確認訴訟を起こしているのは音楽教育を守る会側ですので、なぜ著作権法第二十二条に該当しないのか?という点について根拠のある主張を展開しなければなりません。
音楽教育を守る会がこれに対抗し得る具体性のある根拠を示せないなら主張は認められないのではないかと考えます。

法治国家とは何か

根源的なお話になりますが、日本は法治国家です。

JASRACの業務は権利者(及び音楽出版社)の持つ楽曲の権利に対して適正な使用料を求め、それを分配する業務です。
この業務は著作権管理事業法に定められる管理事業者が行う適正なものです。

   第四章 監督

(報告徴収及び立入検査)
第十九条  文化庁長官は、この法律の施行に必要な限度において、著作権等管理事業者に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告させ、又はその職員に、著作権等管理事業者の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2  前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(業務改善命令)
第二十条  文化庁長官は、著作権等管理事業者の業務の運営に関し、委託者又は利用者の利益を害する事実があると認めるときは、委託者又は利用者の保護のため必要な限度において、当該著作権等管理事業者に対し、管理委託契約約款又は使用料規程の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(登録の取消し等)
第二十一条  文化庁長官は、著作権等管理事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて著作権等管理事業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一  この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
二  不正の手段により第三条の登録を受けたとき。
三  第六条第一項第一号、第二号、第四号又は第五号のいずれかに該当することとなったとき。
2  文化庁長官は、著作権等管理事業者が登録を受けてから一年以内に著作権等管理事業を開始せず、又は引き続き一年以上著作権等管理事業を行っていないと認めるときは、その登録を取り消すことができる。
3  第六条第二項の規定は、前二項の場合について準用する。

著作権管理事業法 第四章 監督

JASRACの業務が不適正であるのであれば著作権管理事業法にあるように文化庁から利用者保護のための業務改善命令や事業の全部ないし一部停止などの厳しい措置を受けることになります。
著作権法に基づいてJASRACが徴収を求めるように、JASRAC等の管理事業者もまた法律に則った運営が求められています。
逆に指導されない法的に適切な範囲内であれば事業者としては権利者の為に最大限の貢献をするという原則に基づいて徴収・分配業務を行うことができます。
(守る会の署名は利用者の保護を訴える形でこちらに利用されるのではないかと考えています。)

2017.06.02 – 追記

やはり署名は文化庁に提出されているようです。
Minami_Mさんからお教えいただきました、ありがとうございました。

権利や主張の対立はどこにでも起こり得ることですがJASRACだから許せないという主張は「適法か否か?」という視点がなく、少なくとも近代国家の住人といった感じがありません。

主張すること自体は良い事ですし、署名活動に参加をする意思を持つことも良い事です。
しかし、根拠や問題の本質を知らずに迎合するのは非常に残念な事だと思います。

アンケートの結果

あなたは音楽教室に通っていますか?という設問に対してご回答は14件いただけました。
ありがとうございました。

性質上音楽に何らかの形で興味がある方が多いので傾向としては他の場所でアンケートを取るよりも教室に通っている方が多いのではないかと思っていたのですが、蓋を開けてみると経験アリという方はいても現状で音楽教室に通っている方は0人でした。

アンケート一回目
アンケート二回目

感覚的に音楽教室に通っている子はそんなに多くないと思っていたのですが、今はリトミック等もあるので昔よりも増える傾向にあるのかもしれませんね。
理想的には現在音楽教室に通っている方のご意見を伺いたかったのですが(経営している方の意見は聞いたことがある)賛否もあることなのでリサーチはやめました。

本当に音楽は消えたのだろうか?

頂いたご意見もあるので取り上げておきます。

通った事は無い(成人)

歌謡をさぁ町で聞かなくなって変だよな。全部著作権協会のインチキ権利の所為だろ?あんなもので歌を歌ってはイケナイとか気が狂ってるわ。そーゆー意味で左翼人権弁護士にそっくりだよな、夜面。
2017/05/23/ 09:53
ID:cdd1b4debf95

うーん、よくわからないですw

歌謡曲という意味であれば歌謡曲の時代は既に過ぎていまは多様な音楽がありますよ、という事になりますし町で聞かなくなったという部分も微妙な感じですね。

実は街で音楽を聞かなくなったという言葉について気になったので色々とリサーチをしてみました。

店舗での音楽利用

当サイトの話題の一つにもなっているホテルラウンジなどでの生演奏等や、演奏がない時間の有線放送などがない場所は直近半年間で一か所もありませんでした。

同様に喫茶店、飲食店、アパレル関係の店舗、水族館(ショー等で音楽が使用される)、百貨店、ショッピングモールでも有線放送が無い場所は二か所を除きありませんでした。
その二か所については店内でラジオを流していた店舗とテレビを流していた店舗で、結果的に音楽が無い訳ではありませんでした。

逆に音楽が流れていなかった場所は、ホテルなどのバーや大きなブッフェの会場、図書館、コストコでした。

少なくとも歩いていて音楽を聴かないという感覚は無いのですが、できれば具体的にどこから消えたのかという事を説明できる方がおりましたらお教えいただければ幸いです。

環境的な側面

昨今騒音問題は色々な形で表面化し、中には「そこまで言うのか?」という問題もあります。

昨年の産経抄に興味深い一文がありました。

▼夏の風物詩である盆踊りでも、周辺住民への配慮から、騒音対策が必要になってきた。音楽を電波で飛ばし、踊り手が持参した携帯ラジオとイヤホンで音を聞く、「無音盆踊り」を開催している地域もあるそうだ。

騒音に纏わる問題は確かに頭の痛い問題ですが、無音盆踊りという言葉にはビックリしましたw(楽しいのかよそれ;)
この中でも店舗内の大音量の音楽という部分で音楽が流れている事が示唆されていますが気になったのは周辺住民への配慮の部分です。

除夜の鐘、保育園ですら騒音だとクレーム対象になる時代に興味のない音楽が流れていたらそれこそ問題視されそうです。

東京都条例では音響機器に対する使用規制が設定されています。

どちらかと言えば、音楽が消えたというより音楽を消すように求められる社会になりつつあるというのが正しいのかもしれません。

市場動向から見える事

日本オーディオ協会発表の資料と市場動向調査などからイヤホン等の市場が大きく拡大している事が分かります。

プレイヤー種別としては近年ではDAP(Digital Audio Player)が最も高い比率を占めたままの推移を続けており、総数の減少についてはスマートフォンによる視聴増という分析が行われています。

日本レコード協会の発表でもほぼ同様の現象が確認でき、サブスクリプション配信(定額聞き放題)サービスがシェアを拡大している事が分かります。

この傾向から「街で流れている音楽を聴くのではなく、手元で好きな音楽を再生できる環境が定着した」という事が見て取れます。

総合的に見るとサブスクリプション系配信サービスや各社の音楽配信サービスとDAPの定着により、公衆の音楽から個の音楽の時代に完全にシフトしたのではないかと考えます。

時代は大きく変わってきている

音楽を取り巻く環境は20年で大きく変遷してきました。

その昔テレビが街頭で見る物だった時代から個々の家庭に普及したように、放送で聴いていた音楽は手元のプレイヤーに普及したとも言えます。

結果的に配信サービスの電子管理で利用実績が明確に把握できるようになり、権利者にとっても利用者にとっても分かりやすい環境になりました。

著作権法についても非親告罪化の議論などもなされていますが、JASRAC等は非親告罪化にあたっては権利者の意向及び利用者側の利便性を損なわない為の慎重な議論が必要として非親告罪化については一歩引いた視点で意見を検討会に対して進言しています。

権利者団体であるJASRACが権利者優位で検討を進めることは立場的に当然ですが、同時に振興もまた一つの役割としていくつかの試みを続けています。
可能であれば同じ振興という目的を持つ音楽教育を守る会とも妥協点を見出して、良好な関係を作っていければいいのになあと思ってみたりするのです。

そうすればきっと“音楽はまだ死なない”と思うんですよね。

独占禁止法の時もそうであったように、訴訟が本当に始まったとしても結論が出るまでにしばらく時間はかかるのでしょう。

結果がどうなるか非常に興味深いですし、今後の動向についても随時チェックしていきたいと思います。

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みるくここあ
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ウィンドシンセを片手に曲を作っています、演奏するのも聴くのも好き。 ゲームとITと変な情報を拾ってくるのが得意。 色々とやっているらしいけど詳細はヒミツ。 オリジナル曲を公開しています。 http://www.nicovideo.jp/mylist/31704203 作曲風景の生放送もしています。 https://rainbowsound.cafe/rainbow-sound-cafe-live/ 音楽やDTMに纏わる話題を色々と書きます。

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