ゲームの歌に夢を見て -レトロゲームと歌の世界-

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Photo by keigo from PlayLoud!!

その昔、ゲームの音といえばBeep音という単音のピコピコサウンドだけでした。

初期はインベーダーゲームのような効果音のみのゲームなどが主流でした。

コンピューターの普及に伴いゲームの表現力は急激に向上し映像は多色表現になり、サウンドも効果音のみから2音になり、4音になり、8和音へと成長をしていきました。

世界を席巻したFMサウンドチップ、SSG、やがてはADPCM、CDDAとゲームを取り巻く音楽の環境も時代によって変化していきます。
その世代ごとの名作とそれを彩る音楽もまたたくさんの人に愛され、たくさんの名曲が多くの人の記憶に刻まれてきました。

そんなたくさんの楽曲が生まれたゲーム音楽の世界ですが、BGMとしてボーカルを含む楽曲は多くありません。

ゲームと音楽の関係に突然現れた歌入りBGM。
当時の環境の中で聞こえてくる歌の事を鮮明に記憶している人も多いのではないでしょうか?

今回はそんなゲーム音楽と歌の関係について注目してみたいと思います。

なぜゲーム音楽にボーカル楽曲が少ないのか?

今でこそCDDAや圧縮音源の使用が当然となりましたが、今から30年前の環境ではADPCM、今でいうWAVEデータをゲームで鳴らすことは容易ではありませんでした。

音源チップの性能によってはADPCMを鳴らすこともできませんでしたし、今のように大容量のデータを使用することも難しかったので、効果音や演出に使用するサウンドを切り詰め、上手に活用する必要がありました。
FM音源などを使用したBGMとは異なり、大きな容量を使用してしまうボーカル入りのBGMは容量的にも現実的ではなく、また効果音などに重なって再生されるBGMとしてボーカル入り楽曲が適さなかったことも理由だと考えられます。

実際PCエンジンやメガドライブにCDドライブが装着されるようになると、オープニングムービーやタイトルでボーカル入り楽曲を積極的に使用するメーカーが急増しました。
ハードウェアの制約から逃れ、CDDAを使用可能になったことで大容量の映像や音声を使用できるようになった恩恵でした。

ではCDDA以前はボーカル入りBGMはできなかったのか?

そんなことはありません、人はボーカル入りBGMの夢をあくなき探求心で追いかけていました。

古くはファミリーコンピューターのボコスカウォーズというゲームには説明書にBGMと一緒に歌う歌詞カードがついていました。
その他にも歌を入れたかった(もしくはそう感じてほかった)というタイトルはたくさん存在しました。

ここではCDDAが使用できるようになる前の時代、制限のある音源と環境と闘いながらボーカル入りBGMの夢を追ったタイトルについて、その歴史を振り返ってみたいと思います。

サイコソルジャー

SNK
1987年3月

YM3812(OPL 20p 9ch) / Y8950(OPL 2op 9ch+ADPCM 16kHz1ch)

BGMにPCMサンプリングによるボーカルを入れた最初の作品と言われるのがこのサイコソルジャーです。
同年代にリリースされた航空騎兵物語など、SNKは楽曲へのサンプリングサウンドの使用に積極的だった印象があります。
サイコソルジャーのBGMの特筆べき点はFM音源でのBGM演奏にボーカルを重ねる方式でボーカル入りBGMとして演奏をさせていた点です。
現在のCDDAや圧縮音源の再生が可能な環境では考えられませんが、当時のメモリ価格や容量を考えると大胆な発想だったことは間違いありません。

ボーカルパートの長さはおよそ60秒ですが、休符で音声が停止するストップノイズが聞こえるのでフレーズ毎に切り貼りされていると考えられます。
使用したデータはおよそ480kByte前後だと考えられます。
当時のゲームの容量が多くても数MBであった時代にこれだけの容量を歌のために使ったのは大きな挑戦だったと思います。

ニンジャウォーリアーズ

TAITO
1988年2月

YM2610(OPNB 4op 4ch + SSG 3ch + ADPCM 8ch + Noise 1ch)

ゲーム音楽史においてSEGA、KONAMI、NAMCOと並び外すことが出来ないのがTAITOです。
早い段階からゲームにおけるBGMのクオリティを高めるための創意工夫を行っていました。
サイコソルジャーの一曲歌わせてしまうという力業ではありませんが、ニンジャウォーリアーズの代名詞ともなったDaddy Mulkには「Daddy-Da-Da-Da-Daddy」というボコーダーボイスによるボーカルフレーズが含まれています。
Techno popの系譜を受け継ぐゲーム音楽らしい表現でありつつ、BGMという枠にとらわれない音楽としての表現を目指した当時のサウンドチームの熱意を感じる名曲として多くのゲームファンを虜にした作品です。

Undercover Cops

IREM
1992年7月

この作品は意外と知られていないですが、BGMに積極的なボイスパートを使用しています。
ボーカルが入っているというほどではありませんが、比率的にはニンジャウォーリアーズのDaddy Mulkと同程度と言えます。
ゲーム自体も個性的なグラフィックと世界観がありBGMも個性的なものとなっていました。
所謂ファイナルファイトタイプの横スクロールアクションですが、この時期のアイレムゲームの例に漏れずかなり難易度が高かったと記憶しています。

究極戦隊ダダンダーン

KONAMI
1993年

歌入りで絶対に忘れてはならない作品がこの究極戦隊ダダンダーンです。
ど忘れしていました、これを書かないで纏めるなんてありえない;

随所にタイムボカンシリーズのオマージュを盛り込んだアクションゲームですが、導入されてからプレイする前に消えてしまったので自分は未プレイでした。
しかし、ステージ1から子門真人の歌う「The 昭和戦隊モノ」節全開のテーマ曲が暑苦しいほどの主張をしていたゲームです。
BGMも全体にタイムボカンシリーズのバトルシーンを意識していたり、各ステージのタイトルコールがあったりします。
デイトナよりも一年早く、サイコソルジャーから6年ぶりの完全な歌入りBGMと言えます。

残念ながら移植やリメイクはまだない作品ですが、歌が子門真人さんという点でも重要な作品だと思います。

The Who’s Tommy

DATAEAST
1994年

こちらはピンボールですが、ロックオペラとして有名なThe WhoのPinball Wizardがそのまま収録されています。
Pinball Wizardが流れるピンボール台というのが何ともユニークですが台としては非常に遊びやすく、またピンボール初心者にもやさしい難易度だったこともあり個人的には好きでしたがピンボール自体がニッチでありあまり見かける事はありませんでした。
ゲームのBGMとしてライセンスのある曲をガッツリと入れるという方向性はアーケードゲームとピンボールのプレイヤー層の差を垣間見る事できる部分でもあると思います。
データイーストは同年にはGuns N’Rosesのピンボール台もリリースしていて、右のプランジャーがリボルバー、左側にはバラの花とデザインも素敵な台でした。

デイトナUSA

SEGA
1994年4月

28Ch PCM音源

コンシューマーにCD搭載機が標準の時代となりボーカル曲がオープニングに流れることは既に珍しくなくなった時代。
SEGAの名作を多数輩出したプラットフォームであるMODEL2で登場した新時代を感じさせるレーシングゲームであったデイトナUSA。
ゲームセンターで一際目立つ「デイトーナー!!」のボーカルを聞いた人も少なくないのではないかと思います。
プレイしたかどうかに関わらず、デイトナという言葉でそのフレーズを思い起こす人が多いほどにこの曲にはインパクトがありました。
SEGA Model2基盤は28chのPCMを再生可能という強力なサウンド機能を持っており、その性能をフルに活用した軽快なサウンドは多くの人を魅了しました。
プレイ中のBGMとしてボーカルがしっかり入った曲を流したゲームとしてはサイコソルジャーから7年ぶりの作品です。
ボーカルの光吉猛修氏は現在もSEGAのサウンドセクションで活躍されています。

テイルズオブファンタジア

NAMCO
1995年12月

サウンド面ではあまり良い印象を持たれないハードだったSFC。
CDDAの搭載もなかったこのハードでテーマ曲のボーカルを入れるという無茶をやってのけたのが後の人気タイトルとなるテイルズシリーズ第一作目であったテイルズオブファンタジアでした。
ハードウェアの制約上音質的には頑張ったという表現しかできませんが、価格と搭載メモリ量などに制限の多いコンシューマーハードでこれをやろうという事自体大きなチャレンジだと思います。
BGMとしての使用ではありませんが、SFCでボーカル入りの曲を流した唯一のタイトルとして覚えておきたい作品です。

2019.04.30 – 追記

ヤオナタ様からの情報により「SFC唯一のボーカル入り作品」の部分が誤りであると分かりました。
訂正させていただきます。

皆さまからの声

自分の知らなかったタイトルや、予想しなかった作品について情報を寄せていただきました。

メタフォックス(セタ)

セタ、というと実はスーパーリアル麻雀しか印象がなかったのですが、歌うゲームと題して複数のゲームをリリースしている事を教えて頂きました。
STGの情報と言えばあたっく系さんですが、あたっく系さんでの紹介でも極めて出回りが悪かったと言われているので激レアゲーだったようです。

流石にこのゲームは見たことも聞いたこともないタイトルでした。
世界は広いです。

追加でいただいた情報によってセタの前身などの情報まで得る事ができました。
セタが発表した歌入り三部作はツインイーグル→メタフォックス→アルバレスタという三作だったようです。

セタの前身とも言えるアルュメという会社が開発、供給していたX01-010というPCM音源チップがこの三作に使用されていました。
詳細な仕様は不明ですが、三作のBGMを聞く限りサンプリングレートはやや微妙だったようです。

餓狼伝説(SNK)

これまたSNKですが、餓狼伝説初代のリチャード・マイヤステージのBGMにボーカルがあるとお教えいただきました。

当時結構やったタイトルでしたが、印象が全然残っていなかったので完全な見落としです。
あらためて聞いてみるとしっかりボーカルが入っていました。

SNKはNEOGEO時代でも容量を贅沢に使ってサンプリング音声や生演奏パートを積極的に使用していました。
作品も良作をリリースしていましたが、色々と無茶をし過ぎたのが残念な結果に繋がってしまいました。

横山光輝 三国志盤戯 スゴロク英雄記(ANGEL)

なんとSFCのテイルズオブファンタジ以前にボーカル入りの曲が入ったゲームがあるとの情報を頂きました。
それもテイルズオブファンタジアより一年以上前の作品というから驚きです。
聞いた感じボーカルというよりUTAUでの歌唱に近い音節を繋ぎ合わせたデータになっているのでテイルズのように丸ごと歌わせたとは厳密には異なりますが、紛れもなくボーカル入りの楽曲と言えるでしょう。
これによってテイルズについて「SFCで唯一」とした部分が誤りとなりましたので訂正させていただきました。

しかし、これまた見たことも聞いたこともない作品・・・こういった情報で知りえなかったタイトルについて教えて頂きとても嬉しく思います。

Down the World(ASCII)

なんと三国志盤戯よりも三か月早くボーカルの入ったSFCタイトルがあったという情報を頂きました。
アスキーが販売したDown the WorldというRPGです。

SFC時代のRPG全盛期にあってドラクエ・FFを追い越せと各社が試行錯誤する中で、強いインパクトを与えるためにグラフィック・サウンド共に一線を画す努力をしていたという事なのでしょう。
まだまだ知らないタイトルがあるのかもしれません。
平成が終わろうとしている今ですが、こういった記録を後に残していけたらいいなと思います。

無数にあるゲームの中には見たことも聞いたこともないものもまだたくさんあります。
このタイトル以外にもボーカルを鳴らしてしまった驚きの作品が眠っているかもしれません。
そういったタイトルがあればぜひお教えいただければ嬉しく思います。

今となっては個人でさえボーカル入りの楽曲を作ることになんの抵抗もなくなりましたが、FM音源やMIDIの時代にそれを目指すことはとてもハードルの高いことでした。

そんな時代にも熱意とある種の執念でそれを実現しようとしていた人たちの残した作品はどれも語り継がれるものばかりです。

作品を語り継がれるものにした想いに敬意を表して、これからも様々な音楽を楽しむことができればいいなあと思います。

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みるくここあ
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ウィンドシンセを片手に曲を作っています、演奏するのも聴くのも好き。 ゲームとITと変な情報を拾ってくるのが得意。 色々とやっているらしいけど詳細はヒミツ。 オリジナル曲を公開しています。 http://www.nicovideo.jp/mylist/31704203 作曲風景の生放送もしています。 https://rainbowsound.cafe/rainbow-sound-cafe-live/ 音楽やDTMに纏わる話題を色々と書きます。

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