当サイトでも行く末を見守っている音楽教育と著作権を巡る問題について、いよいよ第一回目の口頭弁論が始まりました。
この問題は突然降って湧いた話ではなく、JASRACとヤマハの間では10年にも渡り議論が重ねられてきた問題です。
それだけの期間のやり取りを経ても妥協点を見いだせなかった問題でありヤマハ・カワイなどを筆頭とした音楽教室を守る会側には譲れない部分もあるのだとは思いますが、世論を巻き込んで(署名)展開する社会問題のように提起されるまでになってしまいました。
多くの批判の矢面に立ち続けるJASRACと、音楽教育を守るという大義名分を掲げる音楽教室を守る会。
双方の何が問題なのか?
争点について整理しておきます。
意見陳述の要旨
まずは口頭弁論の要旨を確認してみましょう。
音楽教育を守る会の意見陳述要旨は主に心情に訴える内容となっています。
ページにも明記されている通り“法的解釈を超えて「音楽文化振興」に立った良識判断を期待”という内容であり、具体的な根拠には触れていない内容となっています。
音楽教室が担ってきた役割についての主張もありますが、具体性に欠ける点で説得力に疑問が残ります。
続いてJASRAC側の意見陳述について。
こちらはJASRACの活動について説明と創作者(著作者)についての説明にウェイトを置いています。
こちらでは音楽教室事業者の収益など具体的な数字に触れられています。
基本的には事業者に対して著作権問題の議論を呼びかける内容であり、やや寛容な内容であると読み取れます。
56万件の署名の意味
守る会の意見陳述に2カ月半で56万件の署名が集まった、と陳述しています。
正直、思ったより少ないというのが率直な感想です。
署名ですので内容についてまでは問われないのですが、28年度のヤマハ音楽振興会の事業報告書によると生徒数が約39万人となっています。
これらの直接関係にある生徒と各社の社員などを合算すると56万件という数字は意外と大したことのない数字かもしれません。
端的に言うとネットで大きな声に聞こえても、一般的には重大な事件だとは捉えられていないという事でもあります。
(故に一般に理解を求めるのが難しい分野であるとも言えます。)
もちろんこの数字を軽んじる訳ではありませんが文化庁も有効な数字については考慮するものと考えられますし、世論のみであっさり法改正するようでは衆愚の極みですのでそんなに簡単な話ではないと考えています。
実際の争点はどこになるか?
過去の記事において争点や経過について纏めています。
JASRACから音楽教育を守る会へのヒアリングと経緯についてを纏めています。
音楽教育を守る会からの意見をJASRACが無視をしたと騒動になった点ですが、そもそも守る会からの返答に中身がないため意見として認識しなかった、というのが実情のように思えます。
また、ヤマハの決算短信において教室事業は楽器事業の販売促進を兼ねている記述もあり、その営利性についても触れています。
さらに訴訟に対しての根拠について検討しています。
その他現代の音楽について使用実態と市場動向などから現状を探っています。
音楽教育を守る会の今回の主張では初期に聞かれた「教育目的である(すなわち教育機関として認定されるべき)」といった主張は見られなくなっています。
意見陳述ではもっと強気な発言が飛び出してくるものと考えていたので、双方大人の対応とも言えるかもしれません。
もっとも法的な根拠を引っ張り出すような主張をすれば藪蛇になりかねない部分があるため、理解を求めるという姿勢に留まらざるを得ないのではないかと考えています。
歯車は回り始めてしまった
とうとう舞台は法廷に移ってしましました。
大がかかりな法廷闘争になっても得る物はないように思えますしそんなコストを掛けるくらいであれば料率で相談した方がトータルでは安上がりな気がしないでもないですが、掛け違ったボタンは誰にも戻すことはできないのでしょう。
守る会の主張するように日本の音楽振興を陰日向で支えてきたという自負があればこそ管理団体に対して意見を述べる事が出来るとも言えますし、時代と共に変化する事業や利用形態に対して必要に応じて新たな徴収体制を作っていくという著作権管理団体としての役割を愚直に続けているとも言えます。
音楽配信が一般化し、動画共有サイトでの実績報告や放送利用の実績報告がほぼ100%に近づいた現代だからこそ、音楽教室やライブステージなどの人の手を介す分野の実績を100%にどう近づけていくのかという問題と本気で向き合う時期に来たのではないでしょうか。
そしてこの結果は今後の著作物利用の在り方を考えるターニングポイントになるのではないかと考えています。
第一回の口頭弁論は双方静かな立ち上がり、といった感じです。
今後加熱していくのか、あるいはどちらかが折れるのか。
引き続き注目していきたいと思います。




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