吟遊詩人は誰が為に歌う -ネットゲームとJASRAC-

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Photo by Pawel Kadysz from Unsplash

世界の片隅で誰かのために歌うとか、ロマンチックだと思うんですけどね。

 

記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。

Final Fantasy XIV、バージョン4.15が始まるようです。
アナウンスされていた吟遊詩人による「楽器演奏」がいよいよ実装されるそうです。

MMOゲームでは過去にもMML等による楽器演奏の機能を有したゲームがあります。
ユーザーにとっては特段メリットになる機能ではなくあくまでもゲーム内の一要素であり、それがある事で変化があるとすればそれは現実との境目を少しだけ曖昧にしてくれることかもしれません。

このアップデートに際してファイナルファンタジーXIV 著作物利用許諾条件が更新された事で物議を醸しているようです。

早速一部ユーザーから批判や疑問の声が上がっているようです。
ゲーム内で行われる楽曲の演奏には一体どんな問題があるのでしょうか?

システムをチェックしてみる

残念ながら自分はFF XIVプレイヤーではないので紹介されている情報からシステムについてみてみました。

アップデートの紹介を読むと発音アクションをホットバーにセットして実行するように見えます。
これを見る限りでは上手に配慮したなあという印象を持ちました。
(この点について誤りの指摘やより正確な情報をご提供いただければ幸いですm(_ _)m)

アクションの実行を行って音を鳴らすということはMMLのような完成されたデータが存在しえない形式であるため情報としてログされず他の場所で再生のできない情報になります。
その代わりリアルタイムでの操作が要求される事を考えると、よりリアルではありますが難易度は高いと言えそうです。(キーマクロは存在するかもしれませんがそれを考慮するとキリがない)

配慮の点をまとめると以下の通りです。

  • 転用が出来ない(楽譜でも音楽データでもない)
  • ログされない(目視できず、複製ができない)
  • 演奏(操作)を要求している

なにやら面倒くさい事になっていると感じるかもしれませんが、サービスの運営は様々な法律やルールの中で運営されています。
昨今話題になる事があるガチャの排出確率問題や金額の上限の問題など、ユーザーや社会への影響を考慮した線引きやコンプライアンスの遵守の意識は何よりも重要な事です。
ユーザーフレンドリーな機能でありながらもユーザーと運営のスタンスを守る形を提案しているのは素晴らしい事だと思いますし、後に続くゲームやシステムの参考になるかもしれませんね。

規約には何が書いてあるのか

先のファイナルファンタジーXIV 著作物利用許諾条件を見るとユーザーコミュニティに対してかなり寛容な方針を発表していることが分かります。
コミュニティサイト向けのキットの配布や楽曲の使用もかなりの範囲で許可されています。

反面注釈として次の内容が記述されています。

商用・営利目的に利用することは禁止です。但し、YouTube、USTREAM、Twitch等の動画投稿サイトが正式に提供するパートナー機能等を使用する場合は問題ありません。
パートナー機能等に使用した本著作物の利用権について、動画投稿サイト側から照会があった場合、サポートセンターに掲示されている本条件をご案内ください。

動画にファイナルファンタジーXIV以外の楽曲、音声データをのせることは禁止です。但し、ご自身の音声をのせることはできます。

本著作物を利用している状態で、ファイナルファンタジーXIV利用規約やスクウェア・エニックス アカウント規約で禁止されていることを行ってはいけません。

本著作物のうち、楽曲、音楽データについては、ファイナルファンタジーXIVのゲーム内で撮影した画像や動画などの素材を使用した動画にのみ利用できます。楽曲、音楽データのみの掲載及び楽曲、音楽の視聴を主目的と捉えられる動画等の掲載は禁止です。

ゲーム内の「楽器演奏」を使用している動画については、演奏されている楽曲がファイナルファンタジーXIVゲーム内で使用されている楽曲(Answers/Dragonsong/Revolutions(アレンジ曲含む)は除く)の場合に限り掲載することができます。

プレイ動画やファン作成の動画への使用は寛容ですが、それ以外の使用については認められていません。
同様にプレイ動画等にファイナルファンタジーXIV以外の楽曲を合わせることも禁止されています。
(こういう点は守られていない事が多い部分です。)

なぜそれが出来ないのかについては先日紹介した映画の事例についても併せて参照してみてください。

二重三重に慎重な対応をしているようですが、なぜこのような回り道をしているのでしょうか?

全ては権利の侵害を回避するため

演奏機能を持つとどうしても避けられないのがだれかの著作物である楽曲を演奏する事です。

しかし場所も時間も、そもそも完成された楽曲として演奏が可能か否かを判断する術はなく、使用実態の把握も困難なユーザーの演奏を管理する事など不可能です。
しかし、これがMML等のデータ再生型の機能であれば話は別になります。
完成された演奏データを好きに再生ができる状況であるとなれば、使用実態もログも確実に取得することが可能になります。
こういった形で誰もが取得できる状態になるとインタラクティブ配信で言うところのダウンロード可能な状態と認定される可能性があります。
これを避けるためにもMMLの配布や告知がテキストで行われたり、そういったやり取りをサーバーに残さない方法としてアクションとして実際に演奏させるという方法はベターな選択ではないかと思います。

ダウンロード可能でない状態であってもゲーム内ではあってもインターネット上での演奏の送信が可能であることを考えると、公衆送信権に関わる問題が発生する可能性が考えられます。
ユーザーにとって非営利の演奏行為であってもカラオケ法理のように「ユーザーに演奏が出来る状態を提供している」という理論で運営が連帯責任を問われる可能性があります。
だからこそ公式に使用可能であるという楽曲を使ってください、動画と合わせる楽曲は認めたもの以外は使用しないでくださいと許諾条件に対して明記を行っている物と考えられます。

演奏が可能になったとあれば上手な人なら腕前を披露したくなる気持ちも理解できますが、運営が示す方針には理由があっての事ですので参加者であるのならばルールの中で楽しんで行くのが良いのではないかと考えます。

過去に学ぶ

演奏のシステムが話題になったゲームと言えばNexonが運営しているマビノギです。
このゲームではMMLベースの演奏データを入力することで楽器の演奏が可能になっていました。
(遊んではいませんでしたが、自分もMMLを提供したことがあります。)

そしてこのゲームでもゲーム内の演奏と著作権についてユーザー掲示板で物議を醸したことがありました。
実際2ちゃんねるなどのゲーム板でアニメ主題歌や有名楽曲の演奏データが配布されたりもしていました。
ユーザーの中にもこれはまずいのではないか?と疑問を抱く人がいる中、公式からも明確に「権利侵害に対する憂慮」という形でアナウンスが発表されました。

言い訳としては苦しいですが、運営としての方針発表としては一つ目安になるものではないかと思います。

他の記事でも書きましたが、善意だから、みんなが楽しいからという前向きな気持ちは理解できますし良い事だと思います。
ですが、それが人の権利や利益を奪う言い訳にはならないのです。
ましてやそれを他の人が管理している庭(MMO)で行うとなればもはや個人の問題では済まないのです。

許容されるべき範囲についても考慮して貰いたい

ゲーム内の演奏とは言え、著作物の利用であるという言い方は(眉はひそめたいけど)理解はできます。
MMOにはたくさんの人が参加する訳で、演奏が自由自在に出来るようになれば場合によっては24時間何かしらの楽曲が街に流れるといった可能性が無い訳でもありません。
流石にそうなれば一人のユーザーだけでなく、多くのユーザーが随時著作物を使用しているのだから・・・というカラオケ法理の解釈に正当性を与えてしまうのかもしれません。

しかし、ゲーム内での演奏行為自体は基本的には無償の行為であり、それを行う事で誰かが利益を享受するかと言われればそれはNoです。
境界線を甘くすれば前者のように範囲が際限なく拡大してしまうのかもしれませんが、従来の枠組みの中で判断できる行為でもないようにも思えます。
ゲーム配信向けの支分権管理なども柔軟になりつつある昨今ですのでCESA等の団体で許容される範囲を明確にできるように交渉してくれたらいいのになあとぼんやりと考えたりしています。

まとめ

運営は比較的柔軟な姿勢でユーザーの自由を尊重しているが、同時に他の権利者にも敬意をもって保護するように訴えている。

動画の作成などで許諾している楽曲以外の使用は公式で禁止している。

楽器演奏の内容については運営では規則は設けていないが、インタビューでは出来るだけFFの曲にしてねと回答している。

ルールと節度を持って楽しみましょう。

ゲーム内の演奏機能は機能も制限が多く、聞かせる演奏が可能だとしてもチェックを入れるほどのものかは個人的には疑問です。
監視を行うにしても24時間見て回る訳にもいかないでしょうし、なによりそこまでやってもまともなサンプリングは不可能だと思います。
だからと言っても運営も好き放題はさせていませんよ、という姿勢を見せたのが今回の決定という事なのでしょう。

権利の侵害は今や知らなかったでは済まない時代です、利用者側の知識や理解も求められています。
身近な問題からでも学ぶきっかけとなればよいでしょうし、そういった中からJASRACはクソと言うような中身のない罵倒ではない画期的なアイディアなどが産まれてくればいいなあと期待をして待ちたいと思います。

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みるくここあ
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ウィンドシンセを片手に曲を作っています、演奏するのも聴くのも好き。
ゲームとITと変な情報を拾ってくるのが得意。
色々とやっているらしいけど詳細はヒミツ。

オリジナル曲を公開しています。
http://www.nicovideo.jp/mylist/31704203
作曲風景の生放送もしています。
https://rainbowsound.cafe/rainbow-sound-cafe-live/

音楽やDTMに纏わる話題を色々と書きます。

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