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2001年にJASRACによって行われたMIDI狩りと呼ばれる出来事についてそこに至るまでの電子楽器やメディアの変遷と、法改正や社会の潮流を俯瞰して何があったのかを検討するシリーズ記事です。

年表内のリンクから年代ごとの出来事についてその動きを追えるようにしてみました。

関係団体や当時のユーザーへのインタビュー、スタンダードの交代など様々な出来事を経て成立したインタラクティブ配信規定は本当に文化を殺してしまったのか。

ご意見やご感想、当事者であった方からの情報提供などもお待ちしております。

1970年代

そこで何が起きたのか知りたかった。それを知るには残された時間は少ない。だから今始めるしかなかった。30年の時を越えて、パンドラの匣の底見るために。時代背景の整理1980年代、JASRACはMIDIファイルを公開していたBBSを無差別に潰したという言説があります。「自作曲MIDIしかありません(オリジナル曲専門BBSだから)」という返答に対して「一旦お支払いください。管理曲がないことが証明できたらお返しします」とふっかけて個人BBSホストに嫌がらせしてました。このことを1980年当時のDTM界隈で「MIDI文化を潰した」と言ってるの...

1970年 – 昭和45年

著作権法改正

1973年 – 昭和48年

文化庁第2小委員会 報告書

1974年 – 昭和49年

ヤマハシンセサイザー第一号 SY-1発売

タイトー が日本初と言われるレースゲーム、スピードレースをリリース

1975年 – 昭和50年

世界初のパーソナルコンピューターAltair 8800発売

ヤマハシンセサイザー GX-1発売

1977年 – 昭和52年

Rolandシーケンサー MC-8発売

精工舎が国内初のマイコンSEIKO-5700を発売

米AppleがApple IIを発売、大好評を得る

1978年 – 昭和53年

タイトーが日本中を熱狂させたスペースインベーダーをリリース

1979年 – 昭和54年

ナムコがギャラクシアンをリリース

NECがPC-8001を発売、国内機初のヒット商品となり80年代のパーソナルコンピューター時代の先駆けとなる

1980年代

1970年、著作権法の改正と高度情報化の波により社会構造は大きな変化を迎えている最中でした。マニアに大絶賛され世界的な大ヒットになったApple II、社会現象になったインベーダーゲーム、確実に浸透したコンピューターという道具は使い手の意識の変化を待たずに加速を続けていました。1980年代、情報化へ進んでいく時代に一体何があったのでしょうか。経済成長と新技術の恩恵技術の進歩により一般家庭における音楽の利用形態にも大きな変化がありました。1981年(昭和56年)6月の文化庁第5小委員会の報告書にその内容を見る事ができま...

1980年 – 昭和55年

ナムコがパックマンを発売、世界中で大ヒットとなる

1981年 – 昭和56年

主要楽器メーカー6社によってMIDI規格が策定される

文化庁第5小委員会 報告書

米IBMがIBM PCを発売、Appleのシェアを奪い取る

NECがPC-6001を発売、PSG音源の搭載と合成音声の発音ができた

1982年 – 昭和57年

パソコンサンデーが放送開始、社会的にパーソナルコンピューターへの認知が本格的に拡大する

SHARPがパソコンテレビ X1を発売、富士通がFM-7を発売しNECを含む御三家時代が始まる

1983年 – 昭和58年

ナムコがゼビウスを発売、パックマンと並ぶ金字塔として大ヒットとなる

任天堂がファミリーコンピューターを発売、一部のパーソナルコンピューターを駆逐する

HAL研究所がPSGサウンドボードGSX-8800を発売

アスキーを中心にMSX規格が提唱される

NAMMショーにてProphet600とJX-3PをMIDIで接続し演奏するデモが行われる

ヤマハシンセサイザーDX7が発売、大ヒットシンセサイザーとなる

1980年代に入り技術の進歩と社会の変容によって急激に複製という行為が一般的なものに変化していました。WIPOの資料にも「子供でも簡単にできてしまう」という一文があるように、ラジカセでラジオを録音したり、テープのダビングをするのがごく一般的な文化として急速に浸透していました。1980年から1983年までの間はまだコンピューターミュージックというものは一般的ではなく、ごく限られた人たちが手探りで開拓している時代であり一般的なものではありませんでした。MIDIやコンピューターミュージックと文化の勃興を巡る旅は80年代...

1984年 – 昭和59年

米AppleがMacintoshを発売、8月にIBMがPC/ATを発表する

日本最古のBBSとされるCANSが千葉県松戸市で開設される

坂本龍一氏・小室哲哉氏等も使用したE-Mu Emulator IIが発売される

Rolandから事実上標準のMIDIインターフェイスとなるMPU-401が発売される

1985年 – 昭和60年

ヤマハが音楽制作に機能を特化したMSX規格のCX5を発売

カモンミュージックがPC98シリーズ向けレコンポーザーを発売

赤井電機株式会社(現 AKAI Professional)がサンプラーS612を発売

電電公社が民営化、電気通信事業法が改正されモデムが家庭で使用可能になる

ASCII-NETやCOARA等のポータルBBSが続々とサービスイン

KONAMIがグラディウスを発売、BGMが大人気となる

1986年 – 昭和61年

後に最大のポータルとなるPC-VANがサービス開始

AKAI S900が発売、大ヒットサンプラーとなる

SEGAがアウトランを発売、ゲーム・BGM共に大人気となる

1980年代もいよいよ後半に差し掛かります。85年のCX-5が浅倉 大介氏という天才を産み、同時期から執筆・楽曲提供を開始した古代 祐三氏など、今も活躍する方のルーツがこの時代にありました。しかし、まだMIDIという言葉がシーンの中心にはありせんでした。ハードウェアシーケンサーが未だ現役であり、コンピューターミュージックの世界はまだ手探りが続いている状態でした。しかし87年になるといよいよ本格的にMIDIがコンピューターと密接に関わる出来事が起きます。80年代の終わり、その時何が起きたのでしょうか?MIDI音源 MT-32Rol...

1987年 – 昭和62年

SHARPがX68000を発売

PC-VANと並び二大ポータルとなるNifty-Serveがサービス開始

RolandがLA音源 D-50、MT-32を発売、MIDIの普及がはじまる

1988年 – 昭和63年

MT-32とインターフェイスをバンドルしたミュージくんが大ヒットしDTMという単語を知らしめる

YAMAHAミュージックコンピューター C1が発売

milk氏により内蔵音源向けサウンドドライバMXDRVがリリース

電子ネットワーク協議会が設立

パソケットがスタートし、BBS流通のみだった楽曲データが即売会で販売されるようになる

1989年 – 平成元年

梶原 正裕(かぢゃぽん)氏によるPMDドライバがリリース

富士通がFM-TOWNSを発売

PCゲームとしてMIDIによる音楽再生に初めて対応した「38万キロの虚空」が発売

1990年代

1990年 – 平成2年

PMDと並んで人気を博すFMPドライバが長井”Guu”理氏によりリリース

日本IBMが日本語に対応したDOS/Vをリリース、日本でもPC/AT標準化がはじまる

1980年代はMIDI規格の制定から徐々に環境が整い、85年のレコンポーザーの登場以降定番のフォーマットとなって、制作環境としてミュージくん・ミュージ郎のSinger Song Writerが受け入れられていきました。内蔵音源は変わらずMMLですが、御三家のハードウェア仕様がほぼ固まってきたこともあり、流通ファイルの再現性は向上していきました。大手のサービスイン以降草の根BBSの開局も相次ぎ、有力な草の根BBSがその名を広く知られるようになっていきます。元号が平成に変わった1990年代、その沿革を追っていきましょう。二つの新たなスタ...

1991年 – 平成3年

RolandからSC-55が発売、大ヒットし事実上の標準機となる

スタンダードMIDIファイルフォーマット(SMF)が推奨規格として提唱される

GM Level1が推奨規格として提唱される

wwwの誕生、インターネット時代のはじまり

日本のBBSにおけるMIDIの発信地、ゆいNETが開局される

メガCD、PCエンジンDuoが発売、コンシューマーゲームのCDメディア移行がはじまる

1992年 – 平成4年

第一興商・エクシング・タイトー・日本映像情報システムから通信カラオケが発売される

1993年 – 平成5年

Roland SC-55mkIIが発売、ミュージ郎55としてヒットする

インターネットブラウザ Mosaicがリリースされる

文化庁著作権審議会第9小委員会 報告書

GM規格の登場でMIDI音源は一気に扱いやすい物になりました。1991年のゆいNET開局以降、パソコン通信におけるユーザーコミュニティが密度を上げたことでファイルの流通量は確実に増えました。Part5では書き切らなかったパーソナルコンピューターと周辺事情から見ていきましょう。DOS/Vの登場1990年(平成2年)、日本IBMは日本語表示に対応したDOS/Vと称されるパーソナルコンピューターが発売されます。世界のPC市場では圧倒的だったIBMですが、日本では80年代から日本語に対応ができておらず、御三家を中心とした日本メーカーの製品に全く...

1994年 – 平成6年

CreativeがE-Muのサウンドモジュールを搭載したSoundBlaster AWE32を発売し、パーソナルコンピューターの内蔵音源時代が終焉

1995年 – 平成7年

Microsoft Windows 95発売、GUIが標準の時代がはじまる

NTTがテレホーダイをサービスイン、インターネット普及率を上昇させる

1996年 – 平成8年

佐々木 隆一氏がネットワークでの著作権使用料についてJASRAC・文化庁と勉強会を開始する

通信カラオケにおける著作権使用料についてJASRACと事業者団体が暫定合意

1990年もいよいよ後半に差し掛かります。 Windows 95以降、PC/AT互換機が国内でもメインストリームへと切り替わっていきました。テレホーダイの登場によりテレホタイムの利用者が増え、ネットワークへのアクセスは容易になっていきました。その陰で新たな利用者とモラルの問題のジレンマを管理団体や事業者も抱えるようになっていました。ネットワーク利用者へのモラル啓蒙については様々な場面で議論されていましたが有効な手立てはなく、個別の啓蒙活動が散発的に行われるばかりで効果については期待されるほどのものではありま...

1997年 – 平成9年

ネットワーク音楽著作権連絡協議会が発足、以降ネットワークでの音楽使用について協議の中心を担う

Winampが登場しmp3がデジタル音楽のフォーマットとして世界的に普及する

PC-98シリーズがFM音源の搭載を終了し、FM音源標準搭載のパーソナルコンピューターが無くなる

1998年 – 平成10年

Microsoft Windows98発売

WIPOにより著作権法 附則14条の廃止勧告を受け審議会が検討を行う

1999年 – 平成11年

Napsterがサービスを開始、大ブレイクと共に世界中の音楽業界がシェアリングの脅威に対応を先鋭化する

携帯電話向け音源YAMAHA MA-1が発売、SMAFフォーマットと共に着信メロディの新時代がはじまる

2000年代

2000年 – 平成12年

Napsterが敗訴しサービスを停止する、僅か一年で音楽業界の売上を40%消滅させる

本格的なネットワーク時代と共に、21世紀がやってきました。Windowsのスタンダード化によってコンピューターと音楽を取り巻く環境は一変しました。優秀な圧縮フォーマットであるMP3の出現によりオーディオデータで音楽を扱えるようになったことでリスニング環境にハードウェア音源を必要としなくなり、DTMと音源の関係も大きな変革を迎えていました。そしてオーディオデータが簡単に複製されネットワーク上での著作物の取り扱いについて厳しく対応する必要に迫られる中、通信カラオケや着信メロディ等の新しい音楽のサービスが台頭し、...

2001年 – 平成13年

インターネット上での音楽利用に関する著作物使用料の徴収が開始、後にMIDI狩りと呼ばれる

21世紀になって間もない頃。まだMIDI音源が全盛であった時代のDTM界に突然の荒波が押し寄せました。 後にMIDI狩りなどとも呼ばれるようになったJASRACによる権利侵害サイトへの一斉申し立てが行われたのです。大手MIDIデータ配信サイト等が真っ先にその通達を受け、それを公表したことでそれらに関係したフォーラムや界隈の人間を巻き込んだ一大事件へと発展していきます。権利侵害の通達を恐れた多くのサイトやMIDI作成者はファイル公開を取りやめサイト閉鎖を行う人も多く、MIDIファイルによる音楽データの交換や耳コピーなどの...

参考文献・資料

文部科学省
教育白書

外務省
世界貿易機関(WTO)

公益財団法人著作権情報センター
著作権審議会/文化審議会分科会報告

PC-VAN小史

藤本健のDTMステーション

魔法使いの森
MMLの成立

ぐうたらずのーと
サウンド機能の歴史

電子ネットワーク協議会
各種資料及び情報の照会

NMRC
各種資料及び情報の照会

AMEI
各種資料及び情報の照会

新世代通信網実験協議会
季刊誌BBCC – インターネット時代の著作権問題

日本レコード協会
調査・レポート各種資料

全国カラオケ事業者協会
カラオケ歴史年表
カラオケ白書
協会ニュース

日高良祐氏
音楽配信事業者としての電子楽器産業
DTM文化の盛衰─1990年代のアマチュア・ミュージシャンによるMIDIデータ流通─
メディア技術史から見る同人音楽──パソコンユーザーによる即売会の利用

電波新聞社
BBS電話帳

インプレスR&D/OnDeck編集部
日本の電子出版を創ってきた男たち: この声を聞かずして、電子出版を語るなかれ。

日本弁理士会
月間パテント – 近年の音楽業界をとりまく著作権上の問題に関する研究

藤本 健氏
DTMの原点 Vol.1
DTMの原点 Vol.2
DTMの原点 Vol.3

アンケートにご協力くださった皆様

DMで情報をご提供くださった皆様

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